雨宿り〜大きな傘を君に〜
潰れた箱を拾う先生の姿を見下ろし、罪の重さを感じる。
先生が美味しいと言ってケーキを食べてくれて、本当に嬉しかった。
佐渡先生のチョコレートにも沢山の想いが詰められていたのに。醜い感情のままに台無しにしてしまった。
痛い。
頰よりも胸が張り裂けそうだ。
「佐渡先生?菱川です。遅くにすみません。今から会えませんか」
携帯を取り出した先生が、彼女に電話をかける声を聞きながら目を閉じる。
当然の結果だ。
菱川先生は佐渡先生の元へ行ってしまう。
ハートのオブジェの前に残された私は、永遠に幸せになれない呪いをかけられるべきだ。
「はい、分かりました。すぐに向かいます」
その返事を聞きながら、鉛のように重い足を引きずって先生から離れる。
もう私はあの家に、入れてもらうことすらできないかもしれない。
「どこへ行く?」
怒りを隠そうともしない先生の声に、身体が震えた。