雨宿り〜大きな傘を君に〜
残念ながら今日は数学の講義はないけれど、頰の痛みも気にならないくらいに浮かれている。
「大野、また転んだのかよ」
「…本当に私ってドジだよね」
「ちょっと、来い」
驚いた表情で崎島が駆け寄って来た。
相変わらずのだらしのない格好は、爽やかな顔立ちには不釣り合いだ。
いつまで不良ぶっているつもりだろう。
「話がある」
そして廊下に押し出される。
「この前は目をつぶってやったけど、さすがに2回はありえないだろう。おまえ本当はなにしてるんだよ。誰にやられた?言えよ」
「心配かけてごめん。でも本当になにも…」
「嘘つくなよ」
壁際に追いやられ、崎島の顔が近付く。
「友達だろ?本当のことを言えよ」
「崎島……」
「なんだよ、この俺様にも言えないことか?」
ごめん。崎島、言えない。
いくらあなたにでも、菱川先生が好きなことは言えないよ。