雨宿り〜大きな傘を君に〜
崎島は私の顔の横に手をついた。
逸らすことを許さない強い瞳。
「俺に隠すなよ。どんなことでも受け入れて、おまえの力になってやるから。だから俺を信じて」
「信じてるよ。崎島のこと。それでも言いたくないことだってある」
「…なんだよ、それ」
「ごめんね」
悲しい顔をさせたいわけでないけれど、巻き込みたくない。
「…日曜、塾終わったらどっか行こうぜ」
「いいよ」
「言っとくけど、デートの誘いだからな」
デートって…。
「驚くなよ。俺の気持ち、気付いてただろう?」
「……」
「すっぽかしたら許さないからな」
返事をしない私を置き去りにして、崎島は教室に戻ってしまった。
デートであれば断るべきなのだろうか。
盛大なため息をついたところで、タイミング悪く菱川先生が通りかかった。
「先生…」
もしかして聞かれてた?
菱川先生もまた何も言わず、立ち去ろうとする。
引き止めることはできないよね。
「しっかり励め」
しかしすれ違う瞬間、私だけに聞こえる小さな声が届いた。
「はい」
断ろう。
それがデートであるなら、断らないと。
そう決意して教室に戻った。