雨宿り〜大きな傘を君に〜
「菱川先生が私を好きなることはないって、前にお2人で話されていましたよね」
今は私の話ではなかったのだけど…聞かれたので答える。
でもそうだよね。私と先生の年の差も10歳だ。
「やっぱり男の人にとって10歳も離れていると、恋愛対象に見えませんか」
私の場合、理由はそれだけでないってことは分かってる。女らしくもなければ、可愛くもないから。でも年齢を理由に最初から諦めなければならないことは理不尽だと思う。
「托人の場合、おまえの未来を潰したくないだけだろう。これから大学に行って社会に出るおまえには多くの出逢いがある。いい男だっているはずだよ。今の何倍も広がっていくであろう未来の選択肢を俺なんかが奪っていいか、俺が同じ立場でも悩むぞ」
「選択肢なんていりませんよ。私には先生が居てくれさえすれば」
「俺に言うな。本人に言え」
「だって菱川先生はそんなこと話してくれません」
「言うわけないだろ。格好悪い」
格好悪くても聞きたいことは、いつだって本音だけなのに。全部話して欲しいよ。
「…緒方さんが佐渡先生とのお付き合いをありえないと否定する理由も同じですか」
「……似たようなものだよ。俺からしたら、佐渡先生もまだまだ若い」
緒方さんには申し訳ないけれど、今日の話を佐渡先生に伝えようと密かに思った。