雨宿り〜大きな傘を君に〜
デザートだと言ってシュークリームをカゴに入れた先生はそのままレジに向かう。
カゴに転がった小包装のシュークリームが3つ。
それだけのことなのに。
当然のように私の分もカウントしてくれたことに胸が熱くなる。
この世には当たり前のことなんてひとつもないのだと身をもって知っているからかな。
「先生、やっぱり塾長に話す前に、崎島にはっきり言います。最後にご飯を食べながら、ちゃんと伝えます」
「どうして?」
「私、崎島のことよく知らないですし。まずは話してみないと」
レジ袋に詰めながら告げる。
塾長に話してしまえば、事態が大きくなることもあり得る。
まずは崎島に伝えて、分かってもらえたらそれが1番いいんだ。
彼のプライドを傷付けるようなことは、しない方がいい。
そしてなにより。
今、目の前にある、
穏やかな先生との生活を、壊されたくないと強く思った。
「…人の好意ほど、怖いものはないよ」
「え?」
いつもより低い声が隣りから聞こえた。