雨宿り〜大きな傘を君に〜
放課後は憂鬱だ。
「起立。礼」
いつもなら嬉しいはずのホームルーム終了の号令を聞き、もたもたと教室を出る。
挨拶する友人もいないため、廊下ですれ違った教師に頭を下げて下駄箱に向かう。
キラキラと眩しく、自信のある崎島の表情を見て、いつの間にか壁を作っていたけれど。
今日こそはきちんと対等に向き合わないと!
そう気合いを入れて、校門をくぐった先で、
「あの、」
正面から声を掛けられた。
黒いトレーナーのフードが顔を覆い、そこから覗く鋭い目つきに、とてもきつい印象を受ける。
後、崎島と同じ金髪。
「はい?」
顔を上げる。
随分と身長が高い女の子だ。
「ヒシカワタクトを知ってる?」
え?
菱川 托人。
すぐに変換できたフルネームに、女の子を見つめる。
真っ赤な唇に、長い睫毛。
白い肌。
大学生に見える彼女は、私を見て笑った。
「知ってるでしょう?」
すでに崎島のことは頭から吹き飛んでいた。