雨宿り〜大きな傘を君に〜
重い肩を無視して、彼女を見る。
派手な容姿と乱暴な言葉遣い。
崎島と同じくらい私の苦手なタイプだ。
「菱川先生がどんな人であるとか、あなたと過去に何があったとか。少しの興味もないです。他に用がないのなら、塾があるので失礼します」
言えた!
最初から冷たい表情の彼女の顔色に変化は見られず、ほっとしながら頭を下げる。
どういう意図で私に声を掛けてきたかは分からないけれど。
終わった恋の相手を気にするくらい、まだ先生に特別な感情があるのかもしれない。
怒るくらい、憎むくらい、
菱川先生を愛しているのだ。
「へぇ。アンタも托人の犠牲者になればいいよ」
「そんな言い方……」
「私、有明 沙莉(ありあけ さり)。今日、私と話したことを托人に言ってみなよ?きっとアイツは面白い反応を見せてくれると思うよ」
やっと離れた彼女はくるりと背を向けて、辛辣な言葉を残して立ち去った。
「私、アイツの教え子なの。生徒に手を出すってヤバいよね。アンタも気を付けな」