雨宿り〜大きな傘を君に〜
教え子と先生の恋。
イケナイことだ。
確かに高校では禁止かもしれないけれど、塾なら許されるのかな。
もしかしたら有明 沙莉さんが塾を辞めてから2人は付き合い出したのかも。それなら問題ない?
ゆったりとしたジャージの上からでも分かるスタイルの良い後姿に問い掛ける。
もちろん心の中で。
答えを聞いてしまえば緒方さんとの約束を破ることになってしまうから、知らぬままでいい。
先生は私にとっても優しくしてくれる。
かけてくれる言葉が、建前であるか真実であるかなんて見極められないから。
素直に受け入れて、今日のことは忘れてしまおう。
菱川先生の前で有明 沙莉さんの名前を出すことはしない。
彼女は期待ハズレだとガッカリするだろうけれど、先生の困った顔や怒った顔は見たくないし。それに彼女のことで顔色を変える先生を前に、なんて言葉をかけたらいいか分からないから。
私は恋を知らないもの。
クラスメートで気になる男の子がいたとしても、卒業してしまえば綺麗さっぱり忘れてしまうような一時的な感情。
まだきちんと、恋をしてない私に、
先生と彼女のことはよく分からない。
いつか、恋を知りたいと思う。
その時がきたら、今日の有明 沙莉さんの言動を少しは理解できるのかな。