雨宿り〜大きな傘を君に〜
塾の席は特に決められていないけれど、毎回同じような席に着く。
中央前方の席に座り、いつもと同じように崎島から声を掛けられることをドキドキしながら待つ。
仲良しグループの中心から彼の笑い声が聞こえる。
悩む仲間には明るい声を掛け、休んだ生徒には授業のノートを進んで貸せるような優しい人だ。
その彼に対して苦手や怖いという感情を抱いている私は大分失礼だな。
「課題やった?」
背後で椅子に座る気配がした。
「どの課題?」
「数学。今日、小テストじゃん」
「そうだね」
「俺、出題部分予想したけど、聞く?」
「うん。教えて」
身構えていたけれど、その日は崎島からのお誘いはなかった。
なんだかちょっと安心。
私が勝手に被害妄想してるだけかも。