雨宿り〜大きな傘を君に〜
そして更に嘘を重ねて、私は頻繁に崎島と塾以外で会うようになった。
友達と会っているだけなのに、先生に隠しているというだけだこんなにも罪悪感を覚えてしまうものなのか。
後ろめたいけれど、それ以上に崎島と過ごす時間は楽しかった。
塾の授業のことで話し合ったり、崎島の友達の話で笑ったり。
金髪に、桃色のセーターと、増えたピアスの穴。
崎島は相変わらずだけど、感じていた壁はいつの間にか無くなっていた。
「正月休みも課題でいっぱいいっぱいだったし、もうあっという間に春じゃない?」
「もう2月になっちゃうもんね」
「その前に期末テストがあるな」
「塾の小テスト、崎島に教わったところ沢山出たね!また出そうなところ教えて」
「そうだな。菱川の小テストは相変わらず意地悪な引っ掛け問題多かったな」
「…そうだね」
先生の名前が出るだけで、過剰に反応してしまう。落ち着くために紅茶を飲む。
「なぁ、今週の土曜日どっか行かない?」
「え?」
「勉強もあるから無理にとは言わないけど。少し遠出して、美味しいもの食って、リフレッシュするのもいいんじゃないかなって。たまにはさ」
「行こうかな」
友達第1号の誘いだから、断りたくなかった。
「よっしゃ!」
ガッツポーズをする崎島の嬉しそうな笑顔を見て、ああやっぱり行くって言って良かったな、そう思った。
たぶん菱川先生が私に対して抱く感情も同じなのかもしれない。
目の前の人に笑っていて欲しい、そう思ってくれているのかな。