雨宿り〜大きな傘を君に〜

とにかく土曜と日曜日に出掛けるのだから、早めに課題と復習を終わらせておかないとね。


2人で洗濯物を畳んでいると、今度は先生の携帯が振動した。


どうやら電話のようで、ディスプレイに表示された"沙莉"の文字を二度見してしまった。


「ちょっと、ごめん」


そう言って洗濯物から手を離し、迷わず立ち上がろうとした先生を、

あろうことか私はーー引き止めていた。


これで2度目だ。


咄嗟に菱川先生の腕を掴み、その拍子に携帯が落下した。


そして落ちた拍子に通話ボタンが押されたのか、


『托人、会いたいよ』


電話の向こうから切実な声が聞こえた。






先生と目が合う。


困ったように先生は笑って。
私の手を剥がした。


あのクリスマスの日は、私の手に先生の手を重ねてくれたのに。

今日は私を置いてリビングから出て行ってしまった。


携帯を持って、慌てて行ってしまったのだ。


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