小悪魔彼女×溺愛彼氏
唇を何度も何度もこすり、
何度も歯磨きをした。


だけど何も変わらなかった。


あの、斗真じゃない温もりが
私の記憶から消えてくれない。


気付けばもうみんなが起きる時間で、


「美桜?お前朝からシャワー浴びてんの?」


ドアの向こうでお兄ちゃんが
私に話しかける。
それに答える元気もない。


「美桜?生きてるかー?」


返事をしない私にもう一度問いかけた。


「うん…、大丈夫…。」


やっとの思いで絞り出した声は
自分でも驚くほど、か細いものだった。


「…美桜、とりあえず上がってこい。」


お兄ちゃんそう言われ、
もう一度頭からお湯を浴びて出た。


着替えてリビングへ行く前に
廊下で待っていたお兄ちゃんに捕まった。
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