俺の「好き」は、キミ限定。
 


 ✽ ✽ ✽


「……そういえば、この間話した学園祭、再来週なんだけど。予定、大丈夫そう?」


楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。

それは子供の頃から変わらなくて、きっと大人になっても変わらないんじゃないかと、ふと考えるときがある。


「うん、大丈夫。楽しみにしてるね!」


あのあと二時間ほどかけて水族館内を見て回った私達は、帰りの電車に揺られていた。

今日は水族館を出たあとは、近くのカフェでパンケーキを食べて……。

ドキドキしていたせいで、パンケーキの味もあんまり覚えていなかった。

相変わらず今も手は繋いだままで、電車の揺れと繋いだ手の感触が、不思議と酷く心地が良い。


「もしタイミングが合えば、そのときに友達のナルのこと、紹介させて」

「ナルくんを?」

「うん。ほら……ミオは、俺にたっちゃんのことを紹介してくれたのに、俺は未だにナルのこと紹介できてなかったから」


言われて改めて考えるとそうだった。

ユウリくんの口から、よくナルくんの名前は聞いていたけれど、実際の彼には一度も会ったことがなかったんだ。


「ありがとう、嬉しい……」

「嬉しい?」

「うん。だって、ユウリくんの友達ならきっと素敵な男の子なんだろうし、やっぱり、ユウリくんの仲の良い友達を紹介してもらえるのは嬉しいし……」


──どうして?

と、自分で言っておきながら、また疑問が脳裏を過る。

別に、友達の友達に会えたから嬉しいなんて……今まで、そんなふうに特別に考えたことはなかったのに……。

 
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