俺の「好き」は、キミ限定。
「……ほんと、ズルい」
「え……?」
「そんなふうに言われたら、俺、また調子に乗るよ?」
調子に乗るって、一体どういう──。
と、そこまで言いかけた言葉を飲み込んだのは、また、身体が温かい腕に抱き寄せられたからだった。
ドク、ドク、と伝わる鼓動が、どちらのものなのかなんてわからない。
「ユウリ、くん……」
抱き締められているんだと気付くのには時間は掛からなくて、気づいたときには身体はゆっくりと離されたあとだった。
「……ミオと、少しでも長く一緒にいたいから、送らせて」
そう言って、歩き出したユウリくんの手はいつもよりも熱かった。
だけどそれは、私の手が熱かったのか、ユウリくんの手が熱かったのか……本当のことは、多分、今の私達にはわからない。
ただわかるのは、ユウリくんの立っている右側だけがやけに熱くて、心臓の音も聞こえてしまうんじゃないかと思うほど高鳴っていることだけだ。
帰り道、二人で何を話したのかも……結局、覚えていることはできなかったけれど。