俺の「好き」は、キミ限定。
「ナル……、なんか今朝、変なものでも食べた?」
「……別に。まぁ一応、経験談ってことで」
そう言うと、ナルはすぐに視線を斜め下へと逸してしまった。
だけど、その奥には……消せない切なさが見え隠れして、つい言葉に詰まってしまう。
ナルは過去、苦い恋を経験している。
だからこそ恋の辛さも楽しさも、身を持って知っているんだ。
「……そうだよな。忠告、ありがとう」
呟くと、ナルも小さく頷いてくれた。
同時に、授業の始まりを告げるチャイムが校舎に鳴り響き、クラスメイトが慌ただしく自分の席へと戻っていく。
……ちゃんと、今の時間を大切にしよう。
ふと見上げた空には灰色の雲が浮かんでいて、太陽をすっぽりと隠してしまっていた。
✽ ✽ ✽
「お、美味しいかわからないけど……一応、毒味は済んでます……!」
木曜日の放課後、予定通り駅前で待ち合わせた俺達は、近くの公園へと足を運んだ。
「ふは……っ。毒味って……、そんなのしなくても、普通に美味しそうだけど?」
真っ赤な顔のミオを見ていたらおかしくて、思わず笑みが溢れてしまった。
今日は、恋愛指南書のレッスンの続きを実践するつもりで集まったのだ。