俺の「好き」は、キミ限定。
「え、と……。その……好きって、それは前にも聞いたみたいに、友達として……」
「違う。友達としてじゃない。俺はミオに、俺の彼女になってほしいんだ」
「か、彼女、に……?」
「うん。……ミオ。俺は、ミオのことが好きだよ。だから、俺と付き合ってほしい。友達としてじゃなくて、俺と、恋人になってほしい」
不思議と、心臓は凪いだ海のように穏やかだった。
繋いだままの手だけが熱くて、それがどちらの熱のせいなのかはわからない。
──好きだよ。俺は、ミオのことが好きだ。
朝、電車に乗るといつだって、ミオの姿を探していた。
いつ、声をかけよう。いつか、君に気持ちを伝えたいって、もうずっと前から思っていた。
「恋愛指南書のレッスンを実践しようって言ったのも、本当は俺がミオのことが好きだったからで……。無理矢理なお願いをして、本当にごめん。だけど、そうしてでも、ミオに俺のことを意識してほしかったんだ」
あの日、ミオが落とした本を拾わなければ、きっと今の俺達はいなかった。
もしかしたら俺は今でも、ミオをただ遠くから眺めるだけで、声をかけることすらできていなかったかもしれない。
そう思うと、今この瞬間が奇跡のようにも感じられた。
大好きな子と手を繋いで歩いている。
好きな子に、「好きだ」と気持ちを伝えられた。
もう今はそれだけでも十分で、これ以上の何かを求めることは身に余る欲張りのようにも思える。
何よりここで、ミオからの答えを聞くことが怖くて……。
だってミオは俺のことを、ただの友達だと思っていたんだから。