俺の「好き」は、キミ限定。
 


『美織だって、ユウリくんのことが好きなんでしょ。アンタは、自分の好きな人を信じられないの?』


──ユウリくんのことを、信じる。

ふと、机に目をやると、そこには恋愛指南書が置いてあった。

開かれたページには、次のレッスン項目が書かれている。

──【過去の心の傷には負けないこと】

続く例文には【プリントを無くしてしまって先生に怒られる!? 過去の心の傷に、負けないで☆】と綴られていて、私は思わず唇をキュッと噛み締めた。


『いつまでも臆病なままでいたら、大切なものが手のひらからすり抜けていっちゃうよ』


ユウリくんに告白されたときに、私は彼の気持ちに上手に答えることができなかった。

そんな私を見てユウリくんは返事は急がなくていいと言ってくれたけど、本当は、返事を早く聞きたいと思っているはずだ。


『今日会って、ユウリくんをしっかり見て答えを出せばいいじゃん。大切なことは、きちんと相手の目を見て伝えないと後悔することになる』


たっちゃんの力強い言葉に、私は電話越しに頷いた。

机の上には以前、ユウリくんから貰った淡いブルーのシーグラスが飾ってある。

そして開いた恋愛指南書の隣には、一昨日ユウリくんにプレゼントされたイヤリングが置いてあった。

そのイヤリングを手に取って、鏡の前で自分の耳につけてみる。

半透明の淡いブルーのガラス石がついたイヤリングは、陽に当たるとキラキラと輝いていて、不思議と勇気が湧いてくるみたいだった。

 
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