俺の「好き」は、キミ限定。
「……学校前に着いたよ、と」
携帯電話を取り出して、ユウリくんにメッセージを送った。
本当は駅まで迎えに行くと言われていたんだけど、学園祭で忙しいときに、わざわざ駅まで迎えに来てもらうのは申し訳ない気がして、結局ここまで一人で来た。
「あー! 可愛い子、はっけーん!」
「……っ⁉」
だけど、ぼーっと見慣れない校舎を眺めていれば、突然正面から声をかけられた。
可愛い子……?
大きな声に一瞬肩を揺らしたあとで、自分の周りを確認したけれど、一人で待っている女の子は私しか見当たらない。
「なにキョロキョロしてんのー? ねぇ、今なに待ち?」
「え、え……私?」
思いもよらない事態に目を白黒させると、目の前まで来た男の子が私の肩に腕を乗せた。
「待ってる時間なんて勿体無いしさー。せっかくなら、俺と中に入らない? 女の子一人で回るのは物騒だし、俺がちゃんと案内してあげるからさー」
「あ……いえ、私は今、人を待ってて……」
「えー、それならあとで俺がソイツのとこまで連れてってあげるから! ねっ、それまで俺と一緒に学祭楽しも!」
「え……わわ……っ」
強引に肩を引き寄せられて、思わず身体が強張った。
明るい茶色の髪に、耳には三つのピアスがついている。
背は、ユウリくんよりも低いけれど、男の子だから当然力は女子より強い。