俺の「好き」は、キミ限定。
 


「で、でも! 今、学校前に着いたって連絡したあとだから、離れると心配させちゃうかもしれないので……っ」


この人についていって校舎の中に入ったら、ユウリくんとすれ違いになってしまうかもしれない。

そしたらユウリくんに無駄な手間をかけさせることになるし、何よりこの人に言われるがままついていくのはなんだか怖い。


「わ、私なんかより可愛い子はたくさんいると思うので、他の子を当たってください!」


そう言って、なんとか男の子の腕を振りほどこうとした。

すると、男の子はスーッと顔から笑みを消すと、鬱陶しそうに溜め息をついた。


「あーもう! めんどくせぇなぁ。先輩に誰でもいいから女連れて来いって言われてるんだよ。だから、お前は大人しく俺についてくればいいのに、さっきからゴチャゴチャ余計なことばっかり──」

「──おい……っ!! 何やってんだよ!!」


そのとき、私の肩を掴む男の子の腕を、他の誰かの手が掴んだ。

弾かれたように振り向くと、息を切らせたユウリくんが立っていて、私と男の子を交互に見る。


「……っ、この子、俺のだから。勝手に触らないでくれる?」


思わず胸の鼓動がドクリと跳ねたのは、多分、私がどうしようもなくユウリくんを意識しているからに違いない。


「ユウリ、くん……」

「……ミオ、ごめん。お待たせ」


走ってきてくれたのか、息を切らせているユウリくんは、額にほんのりと汗をかいていた。

そして私に応えて微笑んでくれたあと、肩を回していた男の子のことを再びキツく睨みつけると、掴んでいた手を私から引き剥がして宙へと放る。

 
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