俺の「好き」は、キミ限定。
「汚い手で、触るなよ」
ユウリくんはそう言うと、私を背に隠すように男の子の前に立ってくれた。
「な、なんだよ! ちょっと冗談で声かけただけじゃんか」
「冗談? ふざけんな。この子は俺の大切な子で、お前みたいな奴が勝手に触っていい子じゃないんだよ」
こんなふうに怒っているユウリくんは初めて見る。
強い口調で男の子を糾弾したユウリくんは、真っすぐに男の子を睨みつけていた。
そんなユウリくんの後ろで、広い背中に守られていた私は……どうしようもなく、ドキドキしてしまって……。
「……チッ、はいはい、俺が悪かったよ。さっさといなくなればいいんだろ? お邪魔しましたー」
去り際に舌を打ち、両手を上げた男の子は私達に背を向け校舎の中に戻っていく。
その姿を見送ったあと、後ろの私を振り返ったユウリくんは、とても難しそうに眉根を寄せた。
「……ごめん、来るのが遅くなって。何か変なこととかされなかった?」
心配そうに私の顔を覗き込むユウリくんを前に、また胸の鼓動が大袈裟に高鳴りだす。
「だ、大丈夫! 声をかけられてすぐ、ユウリくんが来てくれたから……」
「……ハァ。それなら良かった。っていうか、だから駅についたら連絡してって言ったのに。ミオは可愛いから、一人でいたら絶対他の奴らに目をつけられるだろうって思ったし……」
安心したように息を吐いたユウリくんを前に、胸の鼓動はただ速くなるばかりだった。
……可愛いって。ユウリくんの目に、私はどんなふうに写っているんだろう。
もしかして、なにか特別なフィルターがかかってる?
私なんてどこにでもいる平凡な顔立ちで、ユウリくんが褒めてくれるみたいな容姿はしていないのに……。