俺の「好き」は、キミ限定。
 


「帰ろう……」


結局そのまま携帯電話をポケットへと戻した私は、長い廊下を歩いて階段を降り、昇降口を出ると校門に向かった。

足元を走る風が冷たく感じるのは、私が病み上がりのせいかもしれない。

帰ったら、今日も大事をとって早めに寝よう……。


「え……」


けれど、そんなことを考えながら顔を上げた私は、校門の前で"ある人"の姿を見つけて足を止めた。

視線の先には綺麗な栗色の髪と、見覚えのある整った顔立ちをした背の高い男の子が立っていて──。

私は必然的に身体を硬直させてから喉を鳴らすと、蚊の泣くような声をこぼした。


「トウヤ、くん……」


──トウヤくんだ。

ユウリくんの親友で、中学生の頃、お姉ちゃんに片想いをしていたトウヤくんが……校門の前に立っている。

 
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