俺の「好き」は、キミ限定。
「あの、それで、俺──」
「な、名前っ! 名前、教えてください!」
熱くなった顔を誤魔化すために、私は慌てて口を開いた。
すると、一瞬だけ目を見開いて固まった彼は、すぐにまた穏やかな笑みを浮かべる。
「……俺も今、自分の名前を言おうと思ったとこ。なんか、こういうのって以心伝心っぽくて嬉しいね」
「……っ!」
「……ゆうり、です。加原 結璃(かはら ゆうり)。駅向こうの男子校に通う、高校二年」
──ユウリくん。
爽やかで綺麗な瞳を持つ彼に似合う、素敵な名前だと思った。
相変わらず高鳴り続けている心臓は、ちっとも収まりそうにない。
「わ、私は、白坂 美織です。こっちの高校に通う、ユウリくんと同じ、高校二年生」
「みおり……」
なんとか深呼吸をしたあとで自分も自己紹介をすると、ユウリくんはとても柔らかに笑ってみせた。
「美織って、すごく綺麗な名前だね」
「え……」
「可愛い美織に、すごく合ってる名前だと思う」
──それは、つまり。
なんて、聞く余裕は私にはない。
不意打ちで『可愛い』なんて言われて、今度は心臓が爆発しそうなほど高鳴った。
耳まで熱くなった顔は、間違いなく真っ赤に染まっているだろう。
美織という名前がすごく合っていると言われたことも、飛び跳ねたくなるほど嬉しかった。