俺の「好き」は、キミ限定。
「そんなに好きなら、さっさと告白でもなんでもすればいいのにな」
「な……っ!」
サラッと言ってのけたナルの言葉に、カッと顔が赤くなる。
「昨日こそ、告白するチャンスだったんじゃないの」
「そ、そんな簡単じゃないんだよ……っ。俺たちは、お互いの名前すら知らなかったのに……。そんな奴に、いきなり告白とかされても引くに決まってるだろ……!」
真っ赤な顔で反論すると、ナルが本日三度目の溜め息をついた。
その哀愁を漂わせた雰囲気も、やけに画になるから腹が立つ。
「いや、そうとも限らないだろ。ユウリの容姿なら、それだけで靡く女は多いんじゃない?」
当然のように言うナルだけど、思わずムッとして膨れてしまう。
……それは、お前だろ。
いわゆるミステリアスとクールを足して、ついでに頭の良さまで足したイケメンが、目の前にいるナルだ。
去年のバレンタインには、他校の女の子から誰よりもチョコレートをもらっていた男でもあるし、そんなナルなら名前も知らない相手に告白しても頷いてもらえるんだろう。
いや……だけどチョコに関して言うなら、正確にはもらったのではなく、差し出されたと言ったほうが正しいのかもしれない。
なぜならナルは、差し出されたチョコレートを一つも受け取ることなく、待ち伏せていた女の子たちに「鬱陶しい」と言い放った男だ。
男子校に通う俺たちは極端に女子との出会いが少ない。
当然、翌日にはクラスのチョコレートゼロ男子からは避難が殺到したのだけれど、ナルは知ったことではないと言った様子で、自分で買ってきたカカオ85%のチョコレートをかじっていた。