俺の「好き」は、キミ限定。
「あの……これ、落ちましたよ」
「……はい?」
午前、七時四十五分。
通い慣れた駅、騒がしく走り去る電車。
ふわりと風に髪が靡いて(なびいて)、私は声がしたほうへと振り向いた。
「"恋を叶える12のレッスン"……って、これ、君が落とした本だよね?」
目の前に差し出された本のタイトルを見て、飛び出しかけた目玉を慌てて押さえる。
ギャア! と、叫びそうになったところを間一髪堪えたあとで、冷や汗が全身からどっと噴き出した。
「な、な、な………っ」
なんで、まさか……!
さっき、ちゃんと鞄に入れたはずなのに!
慌てて鞄を見てみるとファスナーがパックリと開いていて、入れたはずの本の姿は見当たらない。