俺の「好き」は、キミ限定。
「う、……あ」
「……美織?」
「う、ううんっ。な、なんでもないっ!」
思い出したらボンっ!と効果音でもつきそうなくらい、顔が熱を帯びていくのがわかった。
慌てて手に持っていた本を鞄の中に押し込んだけれど、一度思い出してしまうと昨日の光景がなかなか頭から離れない。
昨日は二回も、ユウリくんに抱き締められたんだ……。
一度目は、駅でサラリーマンとぶつかって、転びそうになったところを抱きとめられた。
これは事故だとしても、二度目はアメリカ式のお礼で、突然ギュッとされてしまった。
「……やっぱり、何かされたんじゃないでしょうね」
「え、は、えっ⁉ そ、そ、そんなことないよっ!」
思わずブンブンと顔を左右に振ると、やっぱりたっちゃんには疑いの目で見られてしまった。
だけど、昨日のあの二回のハグには大した意味はなくて、一度目はハプニング、二度目はただの挨拶だったというだけの話だ。
だから、私がいちいち意識することじゃないし、わざわざ報告することでもない。
まぁ……強いて言うなら、私は生粋の日本人でアメリカ式の挨拶には慣れてないから、二度目のハグは、さすがに驚いちゃったけど──。