俺の「好き」は、キミ限定。
「バカバカしいっ。ほんと、バカバカしい。そんな、恋愛指南書の中身を実践したからって、恋ってものの本質がわかるわけじゃないでしょ!?」
たっちゃんの言うことは、最もだと思う。
本に書かれていることを実践してみたところで、本当の意味で自分が恋を知れるわけじゃない。
「美織もその男もほんとに変だし、あり得ない!」
腕を組み、毒を吐き続けるたっちゃんの怒りはちっとも収まる気配がなかった。
私はそんな親友を前に顔を上げると、一度だけ小さく息を吐いてから、とても静かに口を開く。
「……変なことになってるっていうのは、よくわかってるよ。でも……たっちゃんは、ユウリくんに会ったこともないでしょ?」
「そりゃそうでしょ……っ! 美織だって、そのユウリとかいう奴とは、一昨日初めて話したんだからっ」
フンッ!と鼻を鳴らして、そっぽ向いたたっちゃんは、腰に手を当て眉根を寄せた。
「うん。だから、お願いだから、これ以上ユウリくんのことは悪く言わないで。会ったこともない相手のことを悪く言うのは違うと思うし、私、たっちゃんには、そういうことしてほしくないよ」
「そ、それは……っ」
けれど、真っすぐにたっちゃんを見つめて言った私の言葉に、綺麗なグレーの瞳が僅かに揺れた。
「私への批判だったら、いくらでも受け止めるよ? でも、憶測で色々言って、相手を傷つけるようなことだけは、絶対にしたらダメだよ」
私の言葉に、まだ何か言い足りなさそうにしていたたっちゃんが、眉尻を下げて押し黙った。
言おうか言わまいか迷った。
でもやっぱり、これ以上、黙っていられなかったんだ。
それは私が、たっちゃんのことを大切に思っているからこそ。
私は、たっちゃんのことが大好きだ。
だからこそ、たっちゃんには陰口を叩くような卑劣なことはしてほしくないし、憶測で誰かを貶めるようなことも絶対にしてほしくない。