俺の「好き」は、キミ限定。
「だから、僕は……」
「……たっちゃん、ごめんね。ありがとう」
長いまつ毛を伏せたたっちゃんを前に小さく笑うと、たっちゃんはハッとして顔を上げた。
苦々しげに寄せられた眉根に、チクリと胸が痛んでしまう。
「ごめんね、気がつかなくて。たっちゃんは、せっかく心配してくれてたのに……」
素直に謝ると、カーッと顔を赤くしたたっちゃんは、フンッ!と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「たっちゃん……」
「べ……別にっ。僕は後々、アホみたいに落ち込む美織を慰めるのが、面倒くさいって思っただけだし……っ」
たっちゃんらしい毒のある物言いに、思わずクスリと笑ってしまった。
同時に思い出すのは、昨日何度も見た、ユウリくんのやわらかな笑顔だ。
『へぇ、それで美織、か。やっぱりミオに似合った、綺麗な名前だね』
スラリとした高い背と、男の子らしい腕に、大きな手。
何度も何度も私を褒めてくれる、春の風のように優しい声は耳に触れるたびに心地よかった。
『ユ、ユウリくんは、どうしてそんなに私のこと──』
どうしてそんなに私のこと、褒めてくれるの?
あのとき言葉を止めたのは、答えを聞くのが照れくさかったから。
些細なことまで拾って私を褒めてくれるユウリくんの言葉は真っすぐだから、ぶつけられると心がとても、くすぐったい。
けれど、同時に思い浮かぶのは──遠い日の記憶の中で重なる、"ある男の子"の寂しそうな笑顔だった。