終わりにした夫婦
⑤・・行方
···今からも優先するだろう
実家にいる間も携帯の電源は、
落としたままだった。
いつまでも、このままではいけない。
正基さんの今の気持ちに少し触れたからか
そう思っていた。
子供達や母から、羽叶さんの事を
聞かれたが、曖昧な返事をして
誤魔化した。
気づいていたかもしれないけど
深く追求される事はなく
ホッとしていた。
子供達と別れて
一度、ホテルに戻り
チェックアウトをして
マンションに戻った。
マンションに戻り
少し埃っぽい部屋の窓を開けて
空気の入れ換えをして
自分の気持ちも落ち着かせた。
山名の両親に連絡をして
今日受けとった事と正基さんの気持ちも
聞くことが出来ました。
と、話すと
お義母さんは、
あんなもので許される事では、
決してないが······
と、話してくれた。
私は、正基さんの新しい住所を
教えてもらって、電話を切った。
すぐに子供達にも
正基の住所を教えた。
どのようにするのかは
子供達が決めたら良いと
思っていた。
あれ以来 電源を落としていた
携帯には・・・
すごい着信件数・・・
ラインやメールの数・・・
ほとんど·····羽叶さん····だ
どこにいるの?
どうしたの?
何かあったの?
少し後に
『省吾にきいたよ、ごめん。
そんなつもりは、なかったんだ
でも·····どれも言い訳だ
亜子を、亜子だけを愛してる
それは·····嘘偽りは····ない
信じて欲しい·····が···
もう信じてもらえないだろうか?』
羽叶さんの気持ちが切々と
綴られていた。
亜子自身、羽叶を想う気持ちは
なんら変わってない
だが·····
正基は浮気をしたわけではない
ただ、正基にとって妻や家族は
必要なかっただけ
なら····羽叶さんは·····?
今からも瑛里子さんに
何かあったら
私より····家族より····
優先していくのだろか
いや······優先していく····だろう····
今までも、そうだったのだから
正基の時は、子供達がいた
だが····今度は·····私には·····
なにも······ない·····
私は······
『明日、夜で構いません
お時間を頂けませんか?
お仕事、忙しいかと思いますが
少しの時間で構いません
宜しくお願い致します。』
と、羽叶にラインをした。
心配をかけた事には、
あえて触れなかった。
それから、私は正基に手紙を書いた。
あの人も新しい道を進んでいるのだ。
だけど、なにもできなかった正基が
物作りをするとは····
仕事一筋だった人だから
苦労はしても育てていく事には
たけているだろう
と·····思いながら·····
お礼の言葉と共に
彼の今からの活躍と健康な日々を
願っていると書き留めた。
不思議だ·····
正基の事を考えて
笑う事が····あるなんて······
正基からもらった家や土地代は
大切に使わせて貰おうと思った。