終わりにした夫婦

···豪②


俺は今、父のいる家に来ていた。

これも母から言われた事だ。

もし、あの人から連絡があったら
豪が、豪だけが実家に行って
あの人と話をしてほしい・・と。

どうせ、直ぐに私がいないとか
出ていったとか
気づかないと思うけど。

「豪。母さんの荷物がないんだ。
あいつは、どこにいったんだ。
夫の定年に慰労の言葉もなく
あいつは、毎日こんな風に
遊び呆けていたんじゃないだろうな!!」
と、俺の顔を見るなり
声を荒げる父に
呆れながら、沸々と怒りが・・・
「やめてください!!
   何も知らないくせに。」
ああ~、やってしまった。
母さんに穏やかに話すように言われたのに。

俺の言葉に
驚きを隠せない顔の父

だが・・・
「お前、何か、知っているのか?」
と、言う父を前に
俺は、黙ったまま
ソファーに座り
テーブルの上に紙を広げた。

訝しげな顔をしながら
父は、その紙と俺を見ながら
ソファーに座り
紙を手にとった。

父は、その紙を読んで
俺を見たから・・
俺はもう一枚の紙を
父の前に出した
それは・・・『 離婚届 』・・・

その届けの証人欄には
母の父親と父の父親の名前が
書かれていた。

そう、母は、両家の両親にも
きちんと話して理解してもらっていた。

父は、頭を垂れてしまった
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