心の中に奏でる、永遠の向日葵
迷いなく答える。
向日葵は、「はー」と息をつくと、そびえかえるんじゃないかってくらいに、顔を上にあげた。
「だろうね。そんな、音だった」
向日葵の言葉に、俺は無言で頷く。でも、向日葵には当然見えていない。
「ほんと、案外簡単に変われるものなんだね」
向日葵はくしゃっと笑って、鍵盤の上に置いてあった指を、静かに自分の足の上に戻した。
『変わる』。そのフレーズを聞いて、俺は昼食の時に、伊藤達に言われた言葉を思い出した。
「そういえば、今日言われたよ。友達に、お前は変わったって。向日葵のおかげだよ。ありがとう」
意味はないが、俺は向日葵を顔を向い合せ、お辞儀をしながらお礼を言う。
「えへへ、とんでもない。全部、君がすごいからだよ」
向日葵は、照れているのか、鼻を指でさすった。
違うよ、向日葵。全部、本当に向日葵のおかげだよ。
向日葵がこんなに明るいから、弾いてる時も、性格自体も、変わってきたんだ。
まだ完璧じゃないけど、それでも変わりつつあるんだ。
でも、それは心の中にとどめておく。口に出すのは、少し恥ずかしかったから。
今日も、また一歩成長した。
そう思いながら、俺はピアノの鍵盤に、目を落として、じっと見つめた。