心の中に奏でる、永遠の向日葵
昨日と同じように、向日葵と一緒に学校を出て、途中で向日葵と別れた。
まだ少し新鮮な、新しい家路を、俺は歩いている。
家についてドアを開けると。
「おかえりなさい」
…え?
おかえりなさい?
なんで、いつも絶対にそんな言葉聞かないのに…。
上を見上げると、玄関の前で、エプロンをつけて優しく微笑んでいる、母の姿があった。
しわがたくさんある顔なのにも関わらず、姿勢と言葉遣いから、非常に上品な雰囲気を醸し出すのが、母さんの特徴だった。
「た、ただいま」
しかし、いつもはわざわざ『おかえりなさい』なんて、言わない。
一体どうしたんだと思っていると、母さんはそのまま何も言わずに、腕でリビングに行けと、促した。
その瞬間、俺は全身に鳥肌が立った。
嫌悪感が、静かに胸に染み込んでいくような、気持ち悪い感覚に襲われる。
こういう時、母さんは俺にとって、必ず悪い知らせを持ってくる。
もう、十六年も母さんと親子をやってるんだ。人よりも愛情は受け取っていない方だとは思うが、それでもたいていの事は予測できる。
逃げ出したいと思ったが、逃げれるわけがないことも、俺はとうの昔に知っている。
俺は腹をくくって、リビングに足を踏み入れた。
母さんは、食卓のテーブルに腰を下ろしている。