心の中に奏でる、永遠の向日葵
来週の土曜日なんて、時間がないじゃないかと思うのが普通だが、母さんは平気でコンクールの一週間前とか、二週間前とかにこういう話を持ってくる。
別段、怒ることではなかった。ただ呆れているだけ。「またか」と、思うだけ。
俺は、椅子から立ち上がると、
「じゃあ、曲の練習してくるよ」
と、言った。
すると、母さんも立ち上がって、俺の頭を撫でた。
「いい子ね。しっかり練習するのよ」
気持ち悪いくらいの優しい声に、優しい瞳。
でも、向日葵のように本当の感情を、母さんの瞳は映し出してはいなかった。
それでも俺は黙って頷くと、二階に上がった。
自分の部屋を通り越して、ピアノ部屋に行く。その名の通り、ピアノが置かれた部屋だ。
ドアを開けて電気をつけると、俺は椅子に座って、大きなグランドピアノの向き合った。
でも、蓋は開けない。じっと、その場に座っているだけ。
俺は静かに、目を閉じた。