心の中に奏でる、永遠の向日葵


すがるようにそう言って、俺の方に顔を向けた。

本当に無我夢中で言ってるのか、持っていた白杖を道に落とし、カランと乾いた音がする。
 

考えないよ。逃げないよ。そうやって冗談を飛ばすように言いたかった。

笑いながら言いたかった。
 

でも、向日葵の言葉は、すべての体の機能をコントロール出来なくするくらい、俺の心に深く刺さった。
 

なんでだろう?別に、何か変なことを考えてたわけでも、なにから逃げたわけでも…。
 




…ふと、昨日のピアノを弾いたときの様子が、脳裏に蘇った。
 

心が真っ白になって、結局なんの成長もしてないって気づいた。
 

向日葵とピアノを弾いてる時は楽しいって思えたけど、結局それは『ピアノを弾く事』を楽しんでるんじゃなくて、『向日葵と一緒にいる事』に楽しさを覚えていただけ。
 


逃げていた。


人間になりたい。そう思う反面、訴えるだけで、今まで自分からそれを、行動に移したことはなかった。
 

感情を持ったら、俺は生きてる価値がない。

母さんに言われた一言が独り歩きして、逃げていたから。
 

でも、向日葵のようにポジティブに考えたら?
 

俺は幸せだ。向日葵のように、不自由な事もない。お金にも困っていない。



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