心の中に奏でる、永遠の向日葵
へえ。普通実力があったら、入学してからすぐに練習させた方がいいと思うけど。
そういえば、中学の時も前の高校の時も、俺は部活に入っていなかったし、そういう上下関係のシステムも知らないけど、やっぱりそういうものなのか。
「嫌にならないのか?自分は十分に実力があるのに、なんでこんなこき使われなくちゃいけないんだ、とか」
「うーん、まあそう思ったことはあるよ。でもさ、どんなに辛くて、どんなに理不尽に思っても、好きだって気持ちの方が勝って、続けられるんだよね」
…好き、か。
そうだよな。好きじゃなかったら、続けられないよな。
別に、剣道に限った話じゃなくて、どんなことでも。たぶんそこには、ピアノだって含まれてるだろう。
でも、俺は…。
「…好きって気持ちはさ、そうやって色んなものの原動力になるわけじゃん?逆に、好きって気持ちがなかったら、人はなにもできないのかな」
水田が俺の方に顔を向けた。
「ピアノの事?」
俺は黙って頷く。水田は、大げさにため息をつくと、試合の練習をしてる人たちを見つめた。
「…これは僕の持論にすぎないんだけどさ。どんなものも、好きって気持ちがなかったら続けられないと思うんだよね。だから空川も、何があったかは知らないけど、本当はピアノが好きなんじゃない?ただ、好きって気持ちを何かで覆いかぶせて、見て見ぬふりをしてるだけでさ」