心の中に奏でる、永遠の向日葵


俺は顔を、足にうずくめた。
 

何かで覆いかぶせているだけ。もしそれが本当だったら、その『何か』っていうのは、俺の過去なんだろうな。
 

感情が真っ白になっていくあの現象も、もし俺の好きって感情をしっかりと前面に出せたら、消えるということなどだろうか。
 

でも、俺にはどうやってその好きって感情を出せばいいのか分からない。

もしそれが分かったら、俺はすべての悩みを解決できるだろう。 
 

感情を持てないのという問題も、ピアノが好きかどうかという問題も、自分が将来ピアニストになれるかという問題も。
 

「おーい、水田。練習再開して」
 

どこからか、そんな声が聞こえた。水田が顔をハッと上げて立ち上がる。 
 

「ごめん。僕行ってくるね」
 
「ああ、ありがとな」
 

水田は俺の言葉を最後まで聞かずに、防具を着なおしながら走っていく。
 

『好きな気持ちがなかったら、続けられないと思うんだよね』 
 

あんなことを言うくらいなんだから、水田はきっと剣道が好きでたまらないんだろう。


水田は、早速練習試合を始めている。竹刀の交わる音が響くたびに、俺は鳥肌が立つ。
 

かっこいいな。俺も、ピアノを弾いてる時、あれくらい真剣に弾いてるんだろうな。

むしろ、真剣に弾きすぎて、感情が消えていくくらいなんだから。
 

もしも、あれくらい好きって気持ちがあったら、幸せだろう。



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