心の中に奏でる、永遠の向日葵


「今日、日向さんは、ちゃんと自分はピアノが好きだと気づけました。音が、今までと全然違って、すごい軽やかになっていたんです。もう、『感情のないロボットピアニスト・空川日向』は、存在しません。そして、両親の言いなりになって自分を押し殺している、『操りロボット・空川日向』も、存在しません。あなたの息子さんは、れっきとした、人間になりました」
 

向日葵…。
 

そこまで、俺の気持ちを代弁してくれるなんて、君はどれだけ勇気と理解力のある人なんだ。

俺には、そこまではっきりと言える、勇気はない。そこまで人の事が分かる、理解力もない。
 

母さんは、完全にポカンと口を開けている。言い返す気力もないようだ。
 

ざまあみろ、とは思えなかった。だって、俺じゃないから。全てを伝えたのは、向日葵だったから。
 

これでいいのか?全部代弁してもらって、結局逃げてるだけじゃないか。
 

これでたとえ母さんたちと和解できたとしても、それは俺がつかみ取ったものじゃない。

それは、戦わずに諦めたことと、何一つ変わりはない。
 

逃げるのだってアリだ。でも、逃げちゃいけないことだって、この世にはある。これが、それなんだ。


人にすべてを言わせるのは、卑怯だ。
 



「…母さん、ちゃんと俺には、話したいことがある。今まで何も言えなかったけど、言いたいことがあるんだ」

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