心の中に奏でる、永遠の向日葵


言葉を絞り出す。

母さんは、すっかり元の表情(何を考えているのか分からない表情)に戻っていた。
 

母さんは、しばらく黙りこくっていたが、やがて「リビングに来なさい」と言って、俺の答えも聞かずに、リビングに入ってしまう。

父さんも、心配そうに俺をちらっと見ると、母さんの後をついて行って、リビングに入っていった。
 

その途端、足の力が抜けそうになって、倒れそうになる
 

「…向日葵、ありがとう。俺、ちゃんと向き合ってみるから」
 

二人っきりになった玄関で、俺は向日葵にそう伝えた。

もう、声は震えてなんかいなかった。
 

「うん。頑張って。私は、もう帰った方がいいよね?」
 

いつもは子供っぽいのに、こういうときだけは大人の対応なんだな、と心の中で苦笑した。
 

「ああ、ごめんな。一人で大丈夫か?」
 
「うん、大丈夫だよ。じゃあね」
 
「ああ。本当にありがとう」
 

向日葵は、白杖で前を叩きながらドアを開けると、俺に手を振って出て行った。
 

…よし。ここからは、一人の戦いだ。いや、一人で戦わなくちゃいけないんだ。

もしも向日葵と一緒だと、俺はすべてを向日葵に任せてしまうから。
 

「うっしゃ」
 

小声で気合を入れると、俺はリビングに入った。
 

母さんが、テーブルの奥の椅子に座っており、父さんは母さんの左隣に座ってる。
 
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