心の中に奏でる、永遠の向日葵
俺は、椅子に座った。
やっぱり、母さんとは怖くて、目が合わせられない。
そんな俺が、話を切り出せるわけがない。案の定、沈黙が流れる。
「あ、あの、向日葵、さんだっけ?す、すごい、良い人そうだったな」
明らかにわざとらしく、そんなことを言った。
この気まずい空気を何とか打破させようとしているのだろう。
でも、向日葵を褒められたことが嬉しくて、思わず素直に頷いてしまった。
「ああ。すごい純粋で、いい子なんだ」
「…その純粋でいい子が、あなたに何かを吹き込んだのかしら?」
積み上げてきたものを、残忍極まりない態度で壊す悪魔のように、母さんは俺の言葉を遮って、そんな冷徹な言葉を放った。
しかし、逆に俺の心から、恐怖の二文字が消える。
湧いてきたのは怒りだけだった。
それも、俺の事ではなく、向日葵がバカにされたことに、腹が立ったのだ。
「向日葵は、俺に吹き込んだんじゃない。変えてくれたんだ。何もかも諦めて、ロボットになっていた俺を、本当の向日葵のような笑顔で、本物の人間にしてくれたんだ」
母さんに言い返したのは、今までの人生の中で一度もなかった。
勢いあまっていったが、初めて言い返せた、と心の中で驚く。
それでも、俺は言葉を続けることが出来た。たぶん、向日葵のおかげだ。