心の中に奏でる、永遠の向日葵
「今日、俺はピアノが好きだって気付けた。感情が入れられないって悩んだり、ロボット、悪魔のようなピアニストって言われたこともあった。でも、それでも俺は、やっぱりピアノが好きなんだって気付けた!」
「だから何なの!そのためにコンクールを欠場して、許されるとでも思ってるの!」
思わず熱が入ってしまいながら語っていると、母さんが机をバンっと叩きながら叫んだ。
思わず唾を飲みこむ。
こんなに声を荒げている母さんは、中学生の時、『生きてる価値がない』と言われ、思いっきり叩かれた時以来だ。
「見てみなさい、これ。コンクールの順位表よ」
母さんが俺の前に、怒りのまま投げた順位表には、一番下のところに、『最下位:空川日向』と、書かれていた。
「あなたのために、マスコミや雑誌記者の方も来てくれたのよ。あなたのピアノが聴きたくて、それでわざわざ聞きに来てくれたお客様だってたくさんいて。あなた、申し訳ないとか、思わなかったの!」
「そりゃあ、申し訳ないとは思ったよ!でも、感情を入れずに弾いたり、私情を織り交ぜて演奏する方が、もっと申し訳ないと思った!それは、演奏家として、絶対にやっちゃいけない事だと思った!だから、エスケープしたんだ!」
母さんの容赦ない罵倒にひるむことなく、俺は怒鳴り返し続ける。
前の俺じゃ、絶対にありえない事だったのに。