心の中に奏でる、永遠の向日葵
今の俺は、違った。
「俺は、ピアノが好きだ。多分、将来もピアノ関係の仕事に就くと思う。就きたいと思ってる。でも…」
俺は、目をぎゅっと瞑ると、かっと母さんの目を見た。
鋭利な刃物のように鋭く、でもどこか奥行きのある、妖しげな瞳。
ここまで真っすぐ母さんの瞳を見たのは、生まれて初めてだった。
「でも、俺は、これからは母さんの為にピアノを弾くんじゃない。自分のためにピアノを弾く。コンクールも自分で決めるし、もう母さんの命令にも従わない!」
怖い。そういう気持ちを持ちながらも、俺は自分の言葉を叫んだ。
ちょっと疲れて、「はあはあ」と、肩を上下に動かしながら、少し荒く息をする。
母さんは、黙ったまま俺を見つめているだけだ。一言も発さずに、ただじっと、俺を見つめている。
ただ、それがとてつもなく悍ましいのだ。母さんと父さんには見えないだろうが、完全に俺の膝は笑っていた。
それでも、俺は絶対に目をそらさなかった。
『自分から作った問題からは、逃げちゃダメだよ』
そう。これは、俺が作った問題だ。だから、逃げちゃダメなんだ。
向日葵は、ちゃんと逃げずに、俺の心を代弁してくれた。
向日葵のためにも、ここで恐怖に負けちゃダメなんだ。
母さんと、目を合わせ続ける。横では、心配そうな表情を浮かべる父さんが、ギリギリ俺の視界に映った。