心の中に奏でる、永遠の向日葵
「ん?どうしたの、日向君?」
向日葵が、何にも返じをよこさない俺に、首を傾げる。
俺は、「あのさ…」と前置きして、鍵盤に置いていた指を離した。
「実は、今一人じゃないんだよ。友達も一緒でさ。今日は、たまたま皆が聴きたいって言ったから来ただけなんだ」
その瞬間、向日葵の顔からすっと笑顔が消えた。
数秒間の間が出来たと思ったら、向日葵の顔が、徐々に赤くなってきた。
「あ、あ…。こ、こんにちは!日向君の友達の、木下向日葵と申します!」
向日葵が頭を下げると、水田がすっと俺の耳に口を近づけた。
「あれが、空川の話してた、盲目の友達…?」
「そう、木下向日葵さん」
すると、今度は伊藤はにんまりとして向日葵の方に向き直った。
「いやあ、こんにちは!俺は、日向君の友達の、伊藤というものです!」
これみよがしに、『日向君』という言葉を強調する。思わず伊藤を蹴りそうになった。
「伊、藤さんですか。よろしくおねがいします」
伊藤と向日葵が握手する。一瞬、胸がきゅっとした。
「よく、向日葵さんの話は聞いてますよ。自分は、向日葵さんのおかげで変われたと、空川は言っていました」
水田は伊藤と違い、紳士的に向日葵に対応する。
「あ、そうですか。嬉しいです。ありがとね、日向君!」