心の中に奏でる、永遠の向日葵


笑顔を俺に向ける。


完全に俺の方を向いてはいないが、やっぱりこういう態度をとるのは俺にだけなんだ、と嬉しくなった。
 

「あ、いや、別に…。水田もなんで言うんだよ!」
 

照れ隠しに、水田を肘で突っつく。


「え?言っちゃダメだった?」と、水田は笑いながら答えた。
 

「ほら、絵里も向日葵さんに挨拶しとけよ」
 

伊藤が黒西にそう促すと、黒西は「え?」と、虚を突かれたような態度をとる。
 

「『え?』じゃなくて、挨拶しろって言ってんの」
 

いつもなら、ここで伊藤に言い返すはずなのに、黒西は何も言わずに、ぺこっと小さくお辞儀した。
 

「こんにちは。黒西絵里です…」
 

やけに低く小さい声だ。挨拶も自己紹介をしただけで、それ以上は何も言わない。
 

「なんだよ、ムード悪いな。とにかく、これからよろしくお願いしますね、向日葵さん」
 

伊藤がそう言って、向日葵が困ったように頭をぺこぺこ下げる。

相変わらず、黒西は顔を下に向けたままだ。
 

なんだろう?俺を音楽室に誘ったときは、すごい元気だったのに。
 

「あ、じゃあ、私はもう帰ります。日向君、またあとでね」
 
「ああ。また放課後に」
 

向日葵が、白杖をつきながら出ていく。


伊藤があからさまに俺をニヤニヤと見つめるので、今度は本当に伊藤の足を蹴った。
 

「盲目って聞いたけど、話してみると普通の感じだね」


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