心の中に奏でる、永遠の向日葵


「だろ?なんでも、表で判断しちゃいけないんだよ」
 

水田の言葉に、俺も同感した。そう、盲目だからってだけで、白い目を向けてはいけない。
 

グー
 

お腹の鳴る音がした。みんなの顔が、キョトンとした。
 

だいたい誰の音なのか分かって、俺は伊藤の方を見た。
 

「…お腹すいてるんなら、続き食べてこれば?伊藤」
 

すると、伊藤は「へへ」と、怒られた後の反省感ない子どものように、頭を掻いた。
 

「バレてたか。さすが、聴力バカ。んじゃ、ご飯食べてくるわー!」
 

聴力バカと呼ばれたのを怒る暇もなく、伊藤は高速で音楽室を出ていく。
 

「はは、ものすごい速さ。じゃ、僕も帰ってご飯食べるね」
 

水田も、伊藤の後をゆっくりとついて行きながら、音楽室から出て行った。
 

残されたのは、黒西と俺だけ。
 

「な、なあ、黒西…」
 
「ピアノ、ありがとう」
 

具合でも悪いのか、と聞く前に、黒西がそう言った。
 

「あ、ああ。それは、構わないけど」
 

なんとなく、さっきの黒西の不審な態度については、聞けない空気になってしまった。
 

しょうがない、俺も帰ろう。


俺がそう思って、ピアノの椅子から降りる。すると、ある言葉が蘇ってきた。
 

『そうだよ、好きだよ』
 

そうだ。伊藤は黒西の事が好きなんだっけ。
 

今二人しかいないし、余計なおせっかいだとは思うが、そのことについて聞くには、絶好のタイミングだ。


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