心の中に奏でる、永遠の向日葵
しかし、幼馴染といえば、俺は恋愛対象に十分入ると思う。
お互い名前で呼び合ってるわけだし、普段の二人からも、仲がいいのが見え見えだ。たぶん、黒西からは「伊藤」という答えが返ってくるだろう。
その時は、伊藤にそのことを伝え、盛大にからかってやる。さっきのお返しだ。
「…な、なあ、黒西」
いざ聞こうとしたら、声が震えてきた。
「お前さ、す、好きな人とか、いるの、か?」
恐る恐る聞いてみた。黒西は何にも答えない。
怒らせたかなと思ってると、黒西は俺の方を振り向いて、どこか悲しげに微笑んだ。
「いるよ。一目惚れした人が」
…あちゃあ…
相手の名前こそ言ってはないが、完全に伊藤じゃないことは確信できる答えだった。
小さいころからの幼馴染を、「一目惚れした人」と言うはずがないから。
…いやいや、まだ諦めるな。望みを完全に捨てる必要はない。
もしかしたら、小さい頃に、伊藤に一目ぼれしたという可能性も…。
「なんでそんなこと聞くの?」
黒西が静かに質問した。おどけたり、ふざけたりしている様子は一切ない。
そのあまりにも鹿爪らしい態度に、俺は答えを返すにも返せなくなってしまった。
「い、いや、まあ、気になったから、かなぁ…」
とりあえず曖昧に返しておく。
何か言われるのかと思ったが、黒西は「そ」とだけ言うと、そのまま音楽室を出て行ってしまった。
そういえば、この前も、黒西は少しああやって冷たい態度を、俺に取ってきた。
なんか悪いことしたのだろうか、と考えてみるが、全く思い当たらない。
俺の頭の中には、クエスチョンマークが渦巻いていた。