心の中に奏でる、永遠の向日葵


これまでにも、何度かここに来ては練習を見学させてもらっているが、ここまで厳しい現場を見たのは初めてだ。

やっぱり、大会が近いからだろうか。
 

『いやぁ、予選大会が来週に迫ってるしさ。そこで二位までに残らないと全国いけないし、今が頑張り時なんだよ』
 

水田はそんなことを言っていたが、頑張り過ぎではないだろうか。
 

あのマメや、痛々しい痣。それに加えて、こんな厳しい練習なんて、正直俺も耐えられない。
 

でも、俺がそんなことを言っても、たぶん水田は『好きだから』と答えるに決まってる。


本当に剣道が好きなんだな、とこれまでの水田の姿を見て、それは大いに思い知っていた。
 

今日は邪魔しないでおこう。そう思って、俺は体育館を出た。
 

あんな厳しい練習をしてるくらいなんだから、きっと本気で全国大会を狙っているのだろう。


そんなときに、ふわっと来た俺が、練習を邪魔するわけにはいかない。
 

自分の大会、というかコンクールには、腐るほど出ている。

しかし、知り合いが大会に出る、というのは初めてかもしれない。
 

俺は、そんなことを思いながら、伊藤の部活室である、美術室に向かった。


なんでも、美術部は人が少ないらしく、伊藤以外にも部員は二人いるのだが、あんまりやる気がない人達らしく、たまにしか部室には顔を出さないらしい。



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