心の中に奏でる、永遠の向日葵


水田、運が悪いな。二回戦目から優勝候補とぶつかるなんて。
 

いや、相手なんか気にしなくてもいい。

水田は、きっとどんな相手でも、努力で打ち負かすに決まってる。
 

水田と、葛城さんとやらが出てくる。
 

お辞儀をして、歩み寄り竹刀を構えて、腰をかがめる。
 

さっきと同じ動作を取って、「はじめ!」という審判の一言で、試合が始まった。
 

「ああ、水田。頑張れよ…」
 

伊藤の必死な声が聞こえたと思ったら、
 

「お願いっ。勝ちますように...」 
 

黒西が、手を組みながら、お祈りしている。
 

大丈夫だからな、水田。頑張ってきたんだから、絶対に勝てるはずだ。
 

心の中で言いながら、水田の試合を見る。
 

ところが、それから数分、二人は何度もぶつかり合うものの、中々決着がつかない。


時間ばかりが過ぎてゆく。もどかしくて、思わず歯ぎしりをしてしまった。
 

ところがその時。



突然二人が急激に近づいたと思ったら、素人の俺にも見えるくらいに、水田がわかりやすく相手のお腹を竹刀で叩いたのだ。
 

審判の人が、素早く白旗を上げる。


盛大な拍手が上がった。はやい、と思っていると、二人はそのまま竹刀は構えず、お辞儀をすると、コートから出て行ってしまった。
 

「…どう、いうことだ?終わりなのか?」
 

伊藤の言葉に、俺はある答えが浮かんだ。
 

「もしかしたら、一本勝ちだったんじゃないのか?」
 

「は?何言ってんだ、お前?」
 

伊藤の間抜けな声に、俺は説明する。


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