心の中に奏でる、永遠の向日葵
「いやあ、全然練習なんてしていなかったのに優勝なんて、案外チョロいんですね。このまま、全国制覇もあり得ますかね?」
「はは。お前はサボりの常習魔だったし、ちゃんと練習さえすれば、いけるかもな」
…嘘だろ。
榊原さんと、先輩らしき人は、どこか皮肉めいた口調で話していた。
バカみたいだ。あんなに練習している水田が、こんな奴に負けるなんて。
「残酷だよね。結局、努力なんて無意味って事なのかな」
黒西がポツリと呟いた。でも、伊藤も俺も、何も答えれなかった。
悔しすぎて、声も出せない。唇を噛んでうつむく。
不公平すぎる。あんなに頑張ってきてたのに。なんで、よりによって…。
そこで、はっとした。へらへらと笑う、榊原さんの姿をもう一度見つめる。
俺と彼は、もしかしたら紙一重なのかもしれない。
俺は、あの人と違ってちゃんと練習しているし、努力だってしている。
でも、天才ピアニストとしてたたえられるようになってから、どこかで優勝なんて当たり前だ、と思っている自分がいたのだ。
俺のピアノは、必ず一等を取る。そんな確信を持って。
事実、その通りの事が起きていたのだ。どんな大きなコンクールでも、俺は必ず優勝していた。
例え、それが全国コンクールでも。