心の中に奏でる、永遠の向日葵
それから、四人で一緒の電車に乗り、帰宅することになった。
水田はいつも通りに俺たちと話していたが、なんとなく伊藤と黒西は、水田に気を使っているように見えた。
たぶん、俺も他人から見たら、気を使っているように見えただろう。
「いやあ、でも先輩が厳しくってさ。ほんと、練習よりも大変だったよ」
「分かるわぁ。一種のパワハラってやつだよな?」
「伊藤の部活は、先輩も後輩もいない、破滅目前の部活だろ」
「っていうか、みんなバカらしくて、あんたの事なんか、だれもパワハラしないわよ」
それでも、徐々にいつも通りの会話になりながら、電車に乗る。
しかし、やっぱり俺の心の中には、自分のコンクールの事や、水田の努力の意味、そのことについて頭がいっぱいだった。
「じゃあ、俺たちはここで降りるから」
「じゃあね」
俺が降りる予定の駅の三個前で、黒西と伊藤は電車を降りる。座席には、俺と水田だけになった。
今なら、聞けるかもしれない。
相手の心情を考えるよりも、やっぱり自分の気持ちが勝ってしまった。
「…あのさ、水田。お前、悔しくないのか?全国大会目前で負けてさ」
「え?」
水田が聞き返す。俺は、失礼を承知で、水田としっかりと目を合わせて聞いた。
「水田は、すごい頑張って、努力してさ。それなのに、負けちゃって、悔しくないのかなって…」