心の中に奏でる、永遠の向日葵


途中から、やっぱりいけないことを聞いてるんじゃないかと、声が細くなってしまった。


水田は少し考えるように前を向くと、「そりゃ、悔しいよ」と答えた。
 

そこで言葉を切ると、俺の方を向いてくれた。

優しい水田の顔が、なぜかいつもよりも、くっきりと見えた。
 

「悔しいけ事は確かだけど…。ある人はさ、『努力が実らないなら、頑張るだけ無駄』って言う人がいるでしょ?でも、その頑張っている間も、意外と色んなものが手に入るんだよ」
 

水田は、ボロボロになった自らの手を見つめて、握りしめた。
 

「それに、僕は普通に剣道が好きだから。目標に向かって努力している時、今考えたらすごい幸せだった。努力は必ず実るものではないけど、確実に得はすると思うんだよね」
 

電車の揺れる音が聞こえる。俺は、何も言えなかった。
 

実るものではないけど、必ず得はする。
 

「…なんか、ポジティブだな」
 

率直な感想を言うと、水田は「そう?」と言って、窓の外の景色を見つめた。
 

「考え方を一つ変えれば、どんなことも、可能性があるって事だよ」
 

電車が進んでゆく。子供たちが、走りながら家路を走る。
 

たそがれ時に広がる空は、俺たちの事を見送るように、美しく赤みがかった、茜色だった。



  
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