心の中に奏でる、永遠の向日葵
二時間後
「いやあ、よかったねー!」
「最後の人は、ラストの高速階段のところ、間違えてたけどな」
「もう、すぐそういうこと言う。そうやって人のミスばっかり探してると、性格ひねくれるちゃうよ」
「大丈夫だよ。もう、ひねくれてるから」
コンクールが終わり、ほかの人たちが会場から出ていく中、俺たちはお互いの感想を言い合っていた。
「でも、やっぱり生で聞くと違うね。特にコンサートホールだと、なんかこう、音が上手く聞こえる」
「うまく聞こえる、じゃなんか皮肉っぽいだろ。上手いんだ」
向日葵は、わざとらしく口を尖らせて、俺の腕を叩いた。
「もう。悪口を言ったと思ったら、正義感ぶったり。どっちかにしてよね」
俺は、「へへ」と、いたずらっ子ぽく笑ってみた。少し、向日葵の性格が入ってきたな、と嬉しくなる。
「行こうか」と、俺の言葉を合図に、俺たちは立ち上がった。
すると、向日葵が、左手を俺に差し出してきた。
…え?
こ、これは、つまり…。
「視線感じたくないから、帰りもよろしく!」
向日葵はそう言って、純然たる笑顔を、俺に向けた。
慌てて胸をさする。また、心臓が飛び跳ねそうになったから。
「も、もちろん」
俺は、向日葵の手に、自分の手を重ねた。俺が歩き出すと、向日葵も俺にくっつきながら、歩き出す。
そこで、俺は繋いだ手のひらに、ある感覚を感じた。