心の中に奏でる、永遠の向日葵


二時間後

「いやあ、よかったねー!」
 
「最後の人は、ラストの高速階段のところ、間違えてたけどな」
 
「もう、すぐそういうこと言う。そうやって人のミスばっかり探してると、性格ひねくれるちゃうよ」
 
「大丈夫だよ。もう、ひねくれてるから」
 

コンクールが終わり、ほかの人たちが会場から出ていく中、俺たちはお互いの感想を言い合っていた。
 

「でも、やっぱり生で聞くと違うね。特にコンサートホールだと、なんかこう、音が上手く聞こえる」
 
「うまく聞こえる、じゃなんか皮肉っぽいだろ。上手いんだ」
 

向日葵は、わざとらしく口を尖らせて、俺の腕を叩いた。
 

「もう。悪口を言ったと思ったら、正義感ぶったり。どっちかにしてよね」
 

俺は、「へへ」と、いたずらっ子ぽく笑ってみた。少し、向日葵の性格が入ってきたな、と嬉しくなる。
 

「行こうか」と、俺の言葉を合図に、俺たちは立ち上がった。


すると、向日葵が、左手を俺に差し出してきた。
 

…え?
 

こ、これは、つまり…。 


「視線感じたくないから、帰りもよろしく!」


 向日葵はそう言って、純然たる笑顔を、俺に向けた。


慌てて胸をさする。また、心臓が飛び跳ねそうになったから。
 

「も、もちろん」
 

俺は、向日葵の手に、自分の手を重ねた。俺が歩き出すと、向日葵も俺にくっつきながら、歩き出す。
 

そこで、俺は繋いだ手のひらに、ある感覚を感じた。



< 266 / 398 >

この作品をシェア

pagetop